EHIME UNIVERSITY Organization For Creation of Our New Value
未来価値創造機構
未来を切り拓く
企業と大学の
共創のカタチ
三浦工業株式会社
代表取締役社長執行役員
米田 剛
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愛媛大学
副学長(未来価値創造)
野村 信福
三浦工業株式会社
代表取締役社長執行役員
CEO兼CTO
米田 剛 よねだ つよし
1991年入社。水処理技術部長、アクア戦略統括部長などを経て、2012年に執行役員、2016年に取締役常務執行役員となり、2024年4月から代表取締役社長執行役員となる。最高経営責任者(CEO)、最高技術責任者(CTO)を兼務している。
愛媛大学 副学長(研究・産学連携、未来価値創造、
カーボンニュートラル)
未来価値創造機構副機構長
野村 信福 のむら しんふく
2007年4月に大学院理工学研究科教授となる。学長特別補佐を経て、2024年4月から副学長に就任。カーボンニュートラル推進室長、未来価値創造機構副機構長、研究・産学連携推進機構副機構長も務め、えひめベンチャー支援機構の代表理事や、学生・若者の実践的なビジネス経験を支援する学チャレ合同会社の最高技術責任者(CTO)も務めている。
専門分野は「熱工学、プラズマ科学」。博士(工学)。
Summary

地域に根ざしながら、世界を見据える三浦工業と、未来を見据えた知の展開に取り組む愛媛大学。本対談では、両者のこれまでの関係性を起点に、企業と大学がどのように連携し、社会課題の解決や人材育成に取り組んでいけるのかを語り合いました。企業の「強み」ではなく「これからの挑戦」にこそ、大学の知が活きる。対話を通じて見えてきたのは、現場のリアルな課題に寄り添いながら、実践的に連携を深めていくためのヒントでした。
【対談日:2025年10月6日 ※所属・職名は対談日時点のものです。】

地元から世界へ
──三浦工業と愛媛大学の“縁”が育むグローバル人材

野村米田社長は、愛媛大学農学部のご出身ですよね。三浦工業は工学系のイメージが強いので、少し意外でした。

米田そうですか。実は工学系の学生に限らず、その他理系専攻や文系の学生も多く活躍しています。私が学生の頃は愛媛大学に三浦工業の寄附講座もありませんでした。地元の大学という点と、農業機械系の企業に興味があったことから農学部を志望しました。

野村学生時代はどんなことに熱中されていたんですか。

米田バイクですね。オフロードバイクで山道を走るのが楽しくて。全国各地を旅していました。

野村そんな学生時代を経て、三浦工業に入社されたんですね。

米田はい。当時は三浦工業が急成長している時期で、所属する農業工学科にも求人が来ていました。卒業論文の目処が早くついたこともあり、少し余裕を持って学生生活を楽しみたいという気持ちもあって(笑)、三浦工業への入社を決めました。

野村三浦工業には愛媛大学出身者が多いと聞いていますが。

米田現在、愛媛大学出身の社員は約480人で、大学別で見ると愛媛大学が最も多いですね。私の代でも学部に関係なく何人も入社していました。

野村学生とも「三浦工業の米田社長は愛大出身だし、君も将来は社長かもよ」なんて話してます(笑)。

米田ライバルは多いかもしれませんが、地元の大学から地元の企業に入り、世界で活躍できる選択肢があるということを、多くの学生に知ってもらいたいですね。

野村三浦工業に就職した教え子に誘われて、北条の海岸でバーベキューをしたんです。そこにアルゼンチンやブラジル、メキシコから一時帰国していた御社の社員が集まっていて、メキシコ帰りの社員はテキーラを持ってきてくれました(笑)。

米田テキーラの蒸留工程では、蒸気ボイラが使われているんですよ。

野村そうなんですね。駐在員の方たちは、みんな陽気で面白い人たちが多い印象です。

米田駐在員だけでも約90人います。現地では経営も任される立場になるので、日本での仕事に比べると幅広い知識が必要となり、自然と鍛えられます。そうした経験は、帰国後の仕事にも大きく役立っています。

野村学生にも、三浦工業に入ったら世界で活躍できるということをもっと伝えたいですね。

企業の“弱み”にこそ知が活きる
──社会人ドクターと大学連携のリアル

野村社会人ドクター制度って、企業にとってはあまりメリットがないというイメージでしょうか。

米田いえ、私は社会人ドクター制度には価値があると考えています。社員が自分に合った専門性を高めることができる点で、企業にとっても有益です。三浦工業でも以前取り組んだことがあり、その際は愛媛大学にもお世話になりました。

野村企業側は、大学にどんなことを期待しているのでしょうか。

米田大学との連携には、自社にない技術、つまり“弱み”を補う役割を期待しています。三浦工業にはボイラや水処理といったコア技術がありますが、それらを共同で研究するというよりも、大学が持つ新しい技術と組み合わせて、新たな事業を創出するような連携が理想です。実際、コア技術の領域では、共同研究のテーマを見つけるのが難しいこともあります。

野村なるほど。企業にとって、入社した人がすぐに戦力になるわけではないですよね。人材育成はどうされていますか。

米田三浦工業では“人”への投資を惜しみません。年間約10万円/人の教育費をかけ、技術・営業・メンテナンスなど各部門が毎年教育計画を立てています。これは業界内でも高水準の取り組みであり、社員の専門性向上とキャリア形成を力強く支援する体制が整っています。

野村それだけ社内教育が充実していると、大学との連携の余地が少ないようにも感じますが…。

米田いえ、むしろ、たくさんあると思っています。水処理も種類が多いですし、環境問題や人手不足への対応には、ロボット化や自動化など、まだ自社に十分な知見がない分野も多い。大学や他企業との連携が必要だと感じています。

コア技術の限界と拡張
──大学との連携が拓く新領域

野村今後はボイラ以外の領域への展開がカギになるのでしょうか。

米田そのとおりです。今は食品工場などのお客様に対して「全体最適」を目指し、工場全体の課題解決に取り組んでいます。その実現には、三浦工業がまだ持っていない技術の導入が不可欠です。排水処理やロボット化など、補うべき領域は多くありますが、それらを組み合わせることで、お客様にとってより価値の高い提案ができると考えています。

野村大学側は、どうしても「三浦工業=ボイラ」という既存イメージに引っ張られて、そのテーマで研究者を探そうとしがちです。

米田企業としては、むしろ「今できていないこと」「これから必要になること」にこそ、大学の知見を活かしたい。社会課題やお客様の困りごとに対応するために、未開拓の技術をどう取り込むかが成長のカギだと思います。

野村つまり、大学が企業と連携するなら、「強み」ではなく「弱み」や「これからの挑戦」に目を向けるべきということですね。企業の中期計画や将来像も理解しつつ、大学がどう応えられるかを考える必要がありますね。

米田まさにそのとおりです。コアのど真ん中ではなく、周辺領域や未開拓の領域にこそ連携の価値があります。様々な社会課題に対して、大学の研究成果と企業が持っていない技術や知見をどう組み合わせるか、そういう視点が重要なのではないかと感じています。

知と実践の交差点
──大学と企業が共に歩むために

野村大学はどうしても”自分の研究”に閉じこもりがちで、企業の課題にどう貢献できるかという視点が弱いと感じています。

米田それは企業側にも言えることです。大学のことを十分に理解しないまま「何か一緒にやりましょう」と言っても、うまくいかないことが多いです。やはり人と人との関係性が大事で、何度も顔を合わせて話す中で、ようやく本音でやりとりができるようになるのだと思います。

野村名古屋には「STATION Ai」という、企業や大学などの関係者が日常的に出入りして、雑談から連携が生まれるような空間があります。ああいう場があると、自然とアイデアが出てくる気がします。

米田そういう“場”は大事ですね。企業としても、大学にどんな技術や知的財産があるのか、正直よくわかっていないことが多い。だからこそ、ざっくばらんに話せる場所があることで、互いの理解が深まり、連携のきっかけが生まれるのではないでしょうか。

野村大学と企業の目的って、基本的には違いますよね。大学は学問の追求、企業は社会実装。でも、「社会課題を解決する」という共通の価値を見出せれば、連携できると思うんです。

米田三浦工業も、お客様の課題を解決することが存在価値だと考えています。地域産業の活性化や環境問題解決といった同じ価値観を共有し、お互いを尊重することが大切だと考えています。

野村大学も、もっと“価値”を意識しないといけないですね。自分たちの研究が社会にどう貢献できるかを考えないと、社会から見放されてしまいますね。

米田大学と企業が連携するには、“深く関わる”ことが欠かせません。表面的な共同研究では社会実装にはつながりにくい。寄附講座のように、長期的かつ密接に関わる仕組みがあると、スピード感も出て成果も出やすいと思います。

野村大学の教員ももっと企業に出ていくべきですし、企業の人が大学で教えることがあってもいい。クロスアポイントメントのような仕組みがもっと柔軟に機能するといいですね。

米田企業と大学、お互いにメリットがあるように、クロスアポイントの可能性を含む人材交流で深く長い関係を構築することは重要と考えています。三浦工業の創業期にも、大学の先生が技術部門に関わることでボイラの燃焼技術が急速に進化したという歴史があります。大学の知を企業に取り込むのは、今に始まったことではありません。

野村なるほど。やっぱり“人”なんですね。制度も大事ですが、結局はどれだけ本気で関われるか。大学も企業も、そこにかかっている気がします。

米田そうですね。徹底議論でお互いが納得して共同研究テーマを決めて、共通のゴールや価値を共有できれば、一緒に進めていけると思います。

実践が育てる挑戦力
──インターンと教育の新しいカタチ

野村今、大学では「アントレプレナーシップ教育」に力を入れています。起業そのものを目指すというより、「新しい価値を生み出す力」や「失敗を恐れず挑戦するマインド」を育てることが目的です。

米田それは企業にとっても非常に重要な視点です。人口減少や市場の成熟化が進む中で、同じことを繰り返しているだけでは企業は成長できません。挑戦できる人材が必要ですし、そういうマインドを持った人が大学から育ってくるのはありがたいですね。

野村ただ、そういうマインドは教室だけでは育ちません。企業の現場に出て、課題に触れ、自分で考えて動く経験が必要です。

米田三浦工業では、1週間程度の短期インターンを受け入れています。技術部門で実際の課題に取り組んでもらうことで、学生も企業の中身を理解でき、企業側も学生の適性が見えてきます。お互いにとって良い機会になります。

野村学生が企業のことをよく知らないまま就職して、ミスマッチが起きるのは本当にもったいない。インターンで「合わない」と分かるのも大事だと思いますね。

米田インターンを通じて結果的に「ミウラは自分には合わない」と思ってもらっても構いません。そうやって納得して進路を選択することが、結果的に良いキャリアにつながると考えています。

野村大学としても、インターンを単なる就業体験ではなく、教育の一環として位置づけたいと考えています。卒業研究の代わりに長期インターンを単位化するなどといった取り組みは、医学部ではすでに臨床実習がそうなっていますし、他学部でも応用できるはずです。

米田企業側としても、若い人材の確保には年々苦労が増しています。だからこそ、学生が在学中から企業と関わる機会を持つことは、採用活動だけでなく、企業文化や業務理解の面でも大きなメリットがあります。

野村学生は1年生の頃から飲食店等でアルバイトをしますが、そういう時間を少しでも企業との関わりに使えたら、もっと将来の選択肢が広がると思います。

米田早い段階から企業と接点を持つことで、社会や仕事に対する理解が深まり、自分に合った進路も見つけやすくなる。大学と企業とがもっと連携できるとそうした機会も増えていいですね。

価値をともに描く
──大学と企業が歩む共創の一歩

野村大学と企業って、立場も目的も違うけれど、だからこそ一緒にできることがあると思うんです。大事なのは、「何を一緒に目指すのか」を見つけること。そこに“未来価値”があるんじゃないでしょうか。

米田おっしゃるとおりですね。企業にとっての価値は、お客様の課題を解決することにあります。そして、大学の研究も社会の課題に向き合うものであれば、きっと交わる接点があるはずです。
立場や目的が違うからこそ、互いの強みを活かし合える。まずはお互いをよく知り、歩み寄ることで、「共に目指す未来」が見えてくるのではないでしょうか。

野村制度や仕組みも必要ですが、やっぱり最後は“人”ですよね。想いを持った人がつながって、対話を重ねて、信頼を築いていく。そうやって初めて、大学と企業が一緒に未来を創っていけるんだと思います。

対談を通じて見えてきたのは、企業と大学が連携するためには、互いの「今ある強み」ではなく、「これからの課題」や「まだ持っていないもの」に目を向けることの大切さでした。それぞれの立場や目的は異なっていても、「社会課題の解決」や「人材の成長」といった共通する価値を見出すことで、連携の可能性は広がります。今後は、企業の課題や挑戦に大学がどう応えられるか、そしてその対話をどう継続していくかが問われていきます。一つひとつの関わりの中に、価値をともに育てていくヒントがある――そんな実感を得られる対談となりました。